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北欧と日本の違い ~技術や知識を利用すること [社会]

9月15日にデンマークから帰国しました。
北欧と日本の往復には慣れている私ですが、時差ボケ解消には5日間ほどかかります・・・。
写真はデンマークから帰国後、眠れないまま朝を迎え、日の出を見ながらテラスにぼーっと座っていた時に撮ったものです。
こんな素晴らしい朝日が仰げるなら、時差ボケも悪くないな[わーい(嬉しい顔)]

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それはさておき・・・

昨夜の「ブロードキャスター」で、日本(五島列島)とノルウェーの漁業の現状を放映していた。ちらっとしか見ていないので、それについて深くはコメントできないが、映っていたのは、ギリギリの生活で、身を粉にして働く日本の漁業従事者。3Kといわれて後継者問題に悩む日本の漁業の現状。それに対して、ノルウェーでは漁業はほとんどがハイテクで省力化されており、労働環境もよく、後継者にも困らず、収入も決して低くない、といったことが報道されていたと思う。劣悪な労働環境であることがうかがえる日本の漁船の内部が映されたあとに、紹介された、ゆったりとしたサロンのような贅沢な空間のノルウェーの遠洋漁船の内部。専属のシェフがついていて食生活も豊か。魚を船にあげる作業もすべて機械で行われる。水揚げした魚はすぐにネット上のオークションで落札され、落札企業の港に入港するという効率性。そこから冷凍パック詰めまで機械で10分で行われる。人手はあまり必要ないので、各自の取り分も多いという。あまりのギャップにちょっと驚がく。

日本は多分野で優れた技術をもっているといわれているにもかかわらず、その技術が効果的に利用されていない

たとえば、北欧の福祉関係者が日本に来て驚くのは、日本の高齢者はなぜこんな身体に合っていない質の低い介護機器を使っているのか・・・ということ。ハイレベルの介護機器は山ほど開発されているにもかかわらず、それをうまく介護の現場に持ちこみ、高齢者それぞれに合うようコーディネートする供給システムがうまく機能していない。

以前、在デンマーク日本大使にお会いした時に言われていたのは、デンマークは環境分野で先進的といわれ、日本から視察団がたくさん来るが、技術的にみると、日本と比べてそれほど大したものをもっているわけではないということ。ただ、デンマークは、それをどのように効果的にシステムに組み入れて、市民にプレゼンして理解を得て、社会的に定着させていくそのプロセスをつくるのが非常にうまいのだ。

言ってみれば、日本はいいものをたくさんもっているのに、それを生かしきれていない、無駄にしてしまっているということ。

日本が北欧から学べるのは、技術そのものよりも、むしろ、人と人との関係の上で、どのように議論して合意に到達し、あらゆるアクターを巻き込んで、もてる技術や知識を現実に利用できるような効率的なシステムを構築していくかということなのだろう。
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古谷大輔

全く石黒さんの意見に賛同します。先日、某書で「スウェーデンと発明」という文章を書いたのですが、僕もほぼ同じような結論に達しています。生きるための現実主義は、歴史的に見てもスカンディナヴィアの過酷な生活環境からはじまっていて、だからそうした生活環境を乗り切るための生きる知恵は、発明品はもとより様々な社会統治の技法の創造にもあらわれや、その出発点において生活環境に深く根ざした関心から創造された技術や知恵ゆえに、深く生活に根ざしたものになる。翻って日本は、一部の知識人や技術者はプロジェクトXのように血のにじむような思いで格闘していても、すべてとは言わないけれども社会全体を巻き込んだ知的格闘のなかから産まれてきたものではないので社会全体の関心や共感を引き起こすには至らず、一部の人の間でのみ知識や技術はファッションのように受容されるところがある。1990年代初頭までのバブルと2000年代半ばの勝ち組がもてはやされた時期を知ってしまった日本人が、ファッションとしての知識や技術の受容マインドを乗り越えるには…過激な議論になりそうなのでやめます。今ベオグラードでこのコメントを書いています。ベオグラードは1998年のNATOによる空爆で破壊された建物がいまだに残る環境ですが、例えば、コソボ問題がひとまず収束したセルビアは1990年代の敗北を国民が抱きしめながら、すこしづつ復興の兆しが見られる。過激な議論とは、国民各位が社会問題を自分に引きつけて議論できるような環境が到来しない限り、石黒さんや僕が思う結論の実現は、なかなか困難ではないかと思うのです。北欧の人もかつては貧困で過酷な環境を乗り切るという問題意識を抱きしめていた。さぁ、僕たち日本人はどうしよう?
by 古谷大輔 (2008-09-23 00:59) 

Nobu

はるばるベオグラードからコメントありがとうございます!

そうですね、まったくその通りだと思います。
昨今の日本に蔓延している「無気力感」がこの状況の背後に見え隠れしている気がします。投票率も絶望的に低く、政治の議論もまったく盛り上がらない日本。自分が何かしても社会なんて変えられないと思ってしまい、それでもなんとか食べて生活できるから、「まあいっか」と現状を容認してしまう。

「総論賛成・各論反対」に代表されるような、社会問題を自分のこととしてとらえられず、個人の利害ばかりにとらわれてしまいがちな日本の現状では、社会全体の未来のビジョンも描くことができないのではないでしょうか。場当たり的な対応ばかりの社会では、知識や技術をいかに効率的に利用できるようなシステムをつくっていくかという議論はまったく成立しませんよね。

この悪循環から抜け出すにはどうすればいいんでしょうか。

・・・それにしても「スウェーデンと発明」という文章、面白そうですね。またぜひ拝読させてくださいね!

by Nobu (2008-09-24 11:26) 

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