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「ミスター社会福祉国家」が語るデンマーク [社会福祉]


     ↑デンマークの保育所。自然豊かな園庭でのびのび遊ぶ。

前回のブログの続き。デンマークにおける負の社会的遺伝についてエスピン=アンデルセンが語ったインタビュー記事について書こうと思う。ちなみにエスピン=アンデルセンは現在スペイン在住のようであるが、実はデンマーク人である(新聞記事では「最も国際的に活躍しているデンマーク人の社会科学者」とされている)。新聞記事のタイトルは「ミスター社会福祉国家が語る」(Weekendavisen Nr.18, 3.maj 2007)。

記事はとても長ーいものだが、いくつかのポイントを簡潔に挙げてみよう。

*デンマークは国際的に見て、負の社会的遺伝を解消することに最も成功した国の一つである。
*教育改革(それによりとりわけ誰でも高等教育を受けられるようにすること)が負の社会的遺伝を食い止めるために必要であると考えられてきた。しかし子どもが学校に入学する7歳の時点ですでに格差は存在している。そこで就学以前の早い段階に対策を講じることが必要である。デンマークで1970~80年代に整備された保育施設が、質の高い保育をすべての子どもに提供しており、それが就学以前の子どもに等しく高い能力をつける機会を与えている。
*子持ち家庭の所得格差が広がっている。所得の低い家庭に焦点をあてる必要がある。
*親の学歴が子どもに影響を与える傾向がある。親が高学歴の場合、子どもと関わる時間をより長くとり、一緒に絵本を読んだりパズルをしたりなど、子どもの感覚を「刺激」することを重視する場合が多い。特に高学歴の父親が子どもと過ごす時間は激増していることが明らかになっている。
*男女がカップルを形成する際に同様の学歴・所得の相手を選ぶ傾向がある。これがカップル間の格差をより大きくする。
*デンマークが「世界一幸福な国」となった要因として、デンマークが長い間、民族的・宗教的・文化的に同質で連帯感のもてる社会であったことが挙げられるだろう。移民が増加し、デンマークが以前ほど同質でなってきたことが今後のデンマーク社会に大きな影響を与えるだろう。

このなかでも特に、就学以前に子どもの能力格差ができてしまう、それを防ぐために保育施設における保育が大きな役割を果たしているという指摘が興味深かった。デンマークの保育施設では字の読み書きなどを教えたりしないが、そういった内容ではなく、自然の中でで生き物や草花と触れ合ったり、さまざまな素材を使って作品を作り上げたりなど、情操教育的な保育内容が豊かだ。

デンマークは「予防」を重視する社会であるが、子どもができるだけ小さいうちから負の社会的格差遺伝を予防しようと取り組んでいるのだ。


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