SSブログ

格差社会について議論しました [授業]

今日の4年生ゼミでは格差社会をテーマとしたグループ発表を行った。1つ目のグループは「日本の教育の格差について」、2つ目のグループは「日本におけるワーキングプアについて」発表をしてくれた。どちらもなかなかよい発表で、それに続くディスカッションでも意見が次々と出て、時間が足りないぐらいだった。(鋭い意見が多い・・・みんないい感性してます!)


          ↑グループが作成したレジュメ

さまざまな格差が拡大した背景、要因を探っていくときりがないほど奥深い問題だが、はっきりしているのは、現在の状況では、国民が「自助努力」によって貧困から抜け出し、生活を改善するのは不可能だということだろうと思う。行政が積極的に対策を講じないと個人の努力では状況は変わらない。

また格差の「連鎖」「遺伝」も深刻な問題だ。親の所得、職業などが子どもの受けられる教育の水準に影響を与え、それにより将来の所得、職業などが決まってしまう。

ではデンマークではどうなのだろうか? 
所得分配を見ると、デンマークはOECD調査で所得分配不平等度がOECD諸国中、最も低い、つまり最も平等な国とされている。自由党・保守党連立の政府が政権をとってから貧困層が増え、格差が拡大しているといわれているものの、国際的にみると格差は非常に少ないわけだ。

さらに、デンマークではあらゆる分野において”negativ social arv”(負の社会的遺伝)をなくそうという取り組みが行われている。負の社会的遺伝とは「さまざまな形態の不平等や障壁(失業、犯罪、病気など)が親から子へと受け継がれること」であるとデンマーク社会省は定義している。

これを防ぐためには「適切な時期に適切な支援を子どもに提供する」ことが必要と考えられており、国をあげて格差を解消する取り組みが行われているのだ。

先日、あの福祉レジーム論で有名なエスピン=アンデルセンが、デンマークにおける負の社会的遺伝について、語っているデンマークの新聞記事を見つけた。(「興味あると思って切り抜いておいたわ」と持ってきてくれたベンテ先生に感謝!) その内容については次回書きたいと思う。


nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 2

古谷大輔

Nobuさん、ブログ開設おめでとうございます!デンマーク社会の現況に関する第一線の情報を配信するNobuさんのブログがますます発展されますことを心からお祈りするとともに、応援します。

歴史的に考えてみると、「デンマーク」がデンマークとして存立するようになったのは制度上には17世紀後半、「民族」という理念上の視点から見れば19世紀となりましょうが、「負の格差」の連鎖に対する取り組みの起源は、この間の時代、つまり18世紀における敬虔主義とそれを担った様々なヴォランタリ・アソシエーションによる行政サービスの代行にあるのではないかと常々考えております。

僕はエスピン=アンデルセンさんとは違い、デンマークのもつ民族的・宗教的・文化的同質性は近代国家が求めた擬制だと考えていて、実のところ、社会活動の担い手は出自や信仰などに応じて多種多様だったと思っています。

現代においてセーフティーネットを様々な民間団体に代行させる動きは顕著です。現代社会の分析においても、歴史上の分析においても、「デンマーク」という統一的枠組みを前提とするよりは、社会におけるガヴァナンスの多様な担い手を分析することが、「負の格差」に対する取り組みの実態に迫れるような気がします。

というわけで、これは共同研究の一つのテーマになりますね!ぜひぜひ、よろしくお願いします。
by 古谷大輔 (2007-07-15 23:09) 

Nobu

>古谷大輔さん

示唆に富むコメントをありがとうございます~。

そうですね、ここのところ社会福祉においても福祉国家論から福祉社会論に焦点があてられるようになってきており、公的部門だけでなく、ボランタリー部門、インフォーマル部門、営利部門の役割も含めてトータルに議論されるようになってきています。

最終的なセーフティネットは公的部門が構築するという認識はデンマークにおいては確固としたものであるように思われるのですが、他部門が社会においてどのように機能し、それぞれがどのような関係をもっているのか。またそれに関連しますが、ユーザーデモクラシーという概念が福祉社会においてどのように位置づけられ、どのように発展してきたのか(いくのか)。そういったことも明らかにしたいという思いがあります。

研究テーマのアプローチはいろいろ考えられそうですね。こちらこそどうぞよろしくお願いします!
by Nobu (2007-07-16 22:38) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。